AI 用語の解説

GraphRAG とは?どんなときに使う価値があるか

GraphRAG は、検索拡張生成(RAG)の一種です。AI が先に資料をナレッジグラフ(人、会社、製品と、そのあいだの関係)に変え、関係の深いまとまりごとに要約をつくり、ばらばらの箇所ではなくその構造から答えます。Microsoft Research が 2024 年 2 月に発表しました。ふつうの RAG が苦手な、資料をまたいで事実をつなぐ質問や、資料全体が何を言っているかを聞く質問のための方法です。

要点

  • RAG:合う箇所を探して、そこから答える。「返金手数料はいくら?」向き。
  • GraphRAG:先に人や物と関係のグラフをつくり、まとまりを要約してから答える。「全インタビューを通して、顧客の不満は何?」向き。
  • コスト:最初に AI がすべての資料を読むので、準備と更新に手間とお金がかかる。
  • チームの最初の一歩:少数の資料から人や物と関係を抜き出し、いまの検索で答えられない質問にグラフが答えるかを確かめる。

GraphRAG とは何か

ふつうの RAG は資料をチャンクに切り、質問に近いチャンクを探してモデルに渡します。Microsoft Research の発表は、これが苦手な場面を 3 つ挙げています。共通の属性でつながった別々の資料の情報を結びつけること("connect the dots")、大きな資料群を通した要約的なテーマを理解すること、そしてデータ全体を集計しないと答えられない質問、たとえば主なテーマの一覧です。

GraphRAG は索引のつくり方を変えます。Darren Edge らの論文では、AI が資料を読んで人や物のナレッジグラフを抜き出し、関係の深い集まり(コミュニティ)ごとに要約を前もってつくります。質問が来ると、各コミュニティの要約が部分的な答えを出し、それを 1 つの答えにまとめます。著者らは、約 100 万トークンのデータで資料全体を問う質問に対し、ふつうの RAG より網羅的で多様な答えになったと報告しています。

Microsoft のオープンソース版には、資料全体の質問向けの global search、特定の人や物の周辺を聞く local search、その 2 つを組み合わせた DRIFT search、そして、ふつうの RAG で十分な質問向けの basic search があります。

小さなチームにとっての意味

  • 経営者が聞きたい質問は、全体についてのものが多い。「失注した商談に共通することは?」「大企業の見込み客がくり返し求める機能は?」。1 つの箇所には答えがありません。
  • 価値はつながりに隠れている。解約した 3 社が同じ連携パートナーを使っていた、という事実は、どの文書にもまとめて書かれていません。
  • ただではない。すべての資料を最初にモデルが読み、資料が変わればグラフをつくり直します。まず 1 つの資料群で試します。

具体例

例として架空の会社を使います。9 人のスタートアップ、ループアナリティクス社には、営業とカスタマーサクセスの通話メモが 120 件あります。CEO がふつうの RAG のアシスタントに「中規模の顧客はなぜ解約するのか」と聞くと、「解約」という語を含む 3 件のメモを返して要約しました。その 3 件については正しく、傾向は見落としています。

メンバーの 1 人が、メモから人と物と関係を抜き出しました。顧客、規模、使っている連携、出た問題、それを言った人。どのつながりにも証拠の引用を添えます。表にすると、解約した中規模顧客 14 社のうち 11 社が同じ CRM 連携を使い、全社が解約前の月に同期エラーを報告していたことがわかりました。どちらも、1 件のメモには書かれていない事実です。

データチームなしで試す方法

  1. いまの検索がうまく答えられない質問を 5 つ書く。できれば資料をまたぐ傾向の質問。
  2. 答えがあるはずの資料を 20〜50 件選ぶ。通話メモやインタビューの要約など。
  3. 人や物と関係を表に抜き出す。関係ごとに出典の引用を添え、同じ名前の表記ゆれ(Acme、Acme Inc.、ACME)をまとめる。
  4. 5 つの質問を表で確かめる。検索では答えられず表なら答えられるなら、GraphRAG を本格的に組む価値があります。
  5. 広げる前に、扱う種類(顧客、製品、問題)を決める。その一覧を正式にしたものがオントロジーです。

よくある誤解

  • 「GraphRAG が RAG に取って代わる」Microsoft の実装自身が、ふつうの RAG で十分な質問のための basic search を残しています。
  • 「まずグラフデータベースが要る」効くかを確かめるだけなら、主語・関係・目的語と引用の表で足ります。
  • 「グラフは常に正しい」抜き出したのは AI です。つながりごとに引用と確からしさを残し、判断の根拠になるものは確かめます。人の手と AI でのつくり方はナレッジグラフへ。

よくある質問

RAG と GraphRAG の違いは?

ふつうの RAG は、質問に合う箇所を探してそこから答えます。GraphRAG は先に、資料に出てくる人・製品・場所とその関係を AI が抜き出してグラフにし、関係の深いまとまりごとに要約をつくってから、その要約とつながりをもとに答えます。資料全体についての質問や、別々の資料に散らばった事実をつなぐ質問に強くなります。

GraphRAG はだれがつくった?

Microsoft Research です。2024 年 2 月 13 日のブログ記事と、同年4月に投稿された Darren Edge らの論文で手法を説明し、オープンソースの実装も公開しています。

小さなチームに GraphRAG は必要?

最初はたいてい要りません。料金や規程のように一度に 1 つの事実を聞くなら、整った資料とふつうの RAG で十分です。300 件のインタビューを通したテーマのように、多くの資料をまたぐ傾向を聞くときに効きます。

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出典

  1. Microsoft Research:GraphRAG: Unlocking LLM discovery on narrative private data(2024 年 2 月 13 日) (閲覧 2026-11-04)
  2. Edge ほか、From Local to Global: A Graph RAG Approach to Query-Focused Summarization(2024 年、2025 年改訂) (閲覧 2026-11-04)
  3. GraphRAG のドキュメント(Microsoft) — global、local、DRIFT、basic の検索 (閲覧 2026-11-04)
  4. Lewis ほか、Retrieval-Augmented Generation(2020 年) (閲覧 2026-11-04)