AI 用語の解説

ナレッジグラフとは?

ナレッジグラフは、知っていることを「もの」と「そのあいだの関係」で記録するしくみです。「Acme は CRM 連携を使っている」「CRM 連携の担当はプリヤ」「Acme は 3 月に同期エラーを報告した」。1 つの事実は主語・関係・目的語の短い文で、それが集まってたどれる網になります。AI のおかげで、ナレッジグラフは安くつくれて(モデルが資料から文を抜き出せる)、役にも立つ(モデルがそこから答えられる)ものになりました。

要点

  • 単位:トリプル。主語 → 関係 → 目的語。W3C の RDF の考え方と同じ。
  • 知られたきっかけ:2012 年 5 月に Google が導入した Knowledge Graph("things, not strings")。
  • いま注目される理由:AI が資料からトリプルを、引用つきで数分で抜き出せる。
  • 効く質問:つながりをたどる質問。「抜けるパートナーに頼っている顧客は?」

ナレッジグラフとは何か

2012 年の Google の発表(Amit Singhal)は、変化を 3 語で言いました。things, not strings。検索語の文字を照合するのではなく、「タージ・マハル」が建造物なのか、グラミー賞を受けたミュージシャンなのか、アトランティックシティのカジノなのかを知り、それぞれがほかのものとどうつながるかを知る、ということです。導入時のグラフには 5 億を超えるものと、それらとその関係について 35 億を超える事実が入っていました。

W3C の RDF は、同じ考え方をいちばん単純な形で示しています。グラフはトリプルの集まりで、それぞれが主語・述語・目的語です。「ループアナリティクス社 — 雇っている — プリヤ」が 1 つ、「プリヤ — 担当している — CRM 連携」がもう 1 つ。つなげると、どちらにも書かれていない問い「ループアナリティクス社で CRM 連携を担当しているのはだれか」に答えられます。

近い言葉が 2 つあります。オントロジーは、ものと関係の種類(顧客、製品、使う、担当する)について合意した一覧です。スタンフォード大学の Ontology Development 101 は、オントロジーに個々の事例を加えたものを知識ベースと呼んでいて、多くの人が言うナレッジグラフにほぼ当たります。

小さなチームにとっての意味

  • チームの知識は、すでにグラフになっている。ただし散らばっている。だれがどの顧客の担当か、どの顧客がどの機能を使うか、どの契約がいつ更新か。CRM と共有ドライブと人の頭の中にあります。
  • AI が下書きをつくれる。Microsoft の GraphRAG の研究は、資料から LLM が直接つくるナレッジグラフを示しています。すべての事実を手で入力しなくてよいのです。
  • AI の答えを確かめられる。つながりごとに元の引用を残しておけば、判断のもとになる 1 本をすぐ確かめられます。

具体例

例として架空の会社を使います。7 人の人材紹介会社ハーバー・ハイヤリングには、顧客企業の依頼書と紹介のメモが 60 件あります。パートナーは、似た職種を採る顧客はどこか、どの候補者をすでにどこへ紹介したかを知りたい。そこで AI に、メモから人や物(顧客企業、職種、候補者、担当者)と関係(採用した、面接した、見送った、担当する)を抜き出してもらいました。「J. オルティス」と「ジェイミー・オルティス」は 1 人にまとめ、どのつながりにも引用と確からしさを添えます。

できた表は 410 のトリプル。顧客と職種で並べ替えると、4 社が 1 年に 2 回ずつバックエンドエンジニアを採っていたこと、1 人の候補者が同じ月に競合する 2 社へ紹介されていたことがわかりました。2 つめは社内の決まりに、1 つめは営業リストになりました。

最初のつくり方

  1. グラフで答えたい質問と、事実が書かれた資料 20〜60 件を選ぶ。
  2. 抜き出す前に、ものの種類を 5〜8 個と、そのあいだの関係を決める。
  3. トリプルを、出典の引用と確からしさつきで抜き出す。同じ名前の表記ゆれはまとめる。
  4. 確からしさの低いつながりと、判断の根拠になるつながりを確かめる。
  5. 図にするか、並べ替える。主語で並べた表でたいていの質問に答えられ、図にするとまとまりが見えます。

よくある誤解

  • 「グラフデータベースが要る」最初はトリプルを並べたスプレッドシートで十分です。問い合わせが複雑になったらデータベースへ。
  • 「用語集と同じ」用語集は言葉を定義します。グラフは、具体的なものについての事実を記録します。
  • 「一度つくれば正しいまま」事実は変わります。つながりに日付を残し、資料から定期的につくり直します。AI の質問への使い方は GraphRAG へ。

よくある質問

ナレッジグラフをひとことで言うと?

事実の地図です。扱うもの(顧客、製品、人)を点に、その関係(買う、使う、報告する)をラベルつきの線にします。1 つの事実が 1 本の線で、たとえば「Acme は Salesforce 連携を使っている」です。

ナレッジグラフという言葉はだれが広めた?

考え方はもっと前からありますが、広く知られたのは 2012 年 5 月、Google が検索に Knowledge Graph を導入し「things, not strings」と打ち出したときです。導入時点で 5 億を超えるもの(オブジェクト)と、それらについての 35 億を超える事実を持っていました。

スプレッドシートとどう違う?

スプレッドシートは 1 枚のシートに 1 種類のものを並べます。ナレッジグラフは多くの種類のものと、そのあいだのつながりを持つので、シートごとに照合しなくても、顧客 → 使う連携 → その開発元、と鎖をたどれます。

AI スキル

AI に、ドキュメントからナレッジグラフを作らせる

「ドキュメントからナレッジグラフを作る」スキルが、この手順を AI に任せられる形にしています。自社や担当する市場、数字を渡すと、AI が同じ手順で進めてまとめます。

このスキルを AI で使う

14日間無料・カード不要

出典

  1. Google:Introducing the Knowledge Graph: things, not strings(2012 年 5 月 16 日) (閲覧 2026-11-04)
  2. W3C:RDF 1.1 Concepts and Abstract Syntax — トリプル:主語・述語・目的語 (閲覧 2026-11-04)
  3. Noy、McGuinness:Ontology Development 101(スタンフォード大学) — オントロジーと個々の事例で知識ベースになる (閲覧 2026-11-04)
  4. Microsoft Research:GraphRAG(2024 年 2 月 13 日) — LLM がつくるナレッジグラフ (閲覧 2026-11-04)