AI 用語の解説
RAG(検索拡張生成)とは?
RAG(検索拡張生成)は、AI が答える前に調べものをするしくみです。チームで管理している資料を検索し、質問に合う数か所を取り出して、そこから答えを書きます。小さなチームにとっては、AI がネットで覚えた一般論ではなく、自社の料金表や規程、ヘルプ記事にもとづいて答えるための土台です。答えの質を決めるのは、道具より資料のほうです。
要点
- しくみ:まず検索、見つかった箇所をもとに答える。
- 由来:2020 年に Patrick Lewis らが発表した論文。文章を書くモデルに、Wikipedia を検索する部品を組み合わせた。
- うれしいこと:最新の自社資料から答え、出典も示せる。
- 崩れる原因:古い版の残り、食い違う資料、単独では意味が通らない段落。
RAG とは何か
言語モデルが知っているのは、学習したデータの中身だけです。自社の返金規程も、先週の値上げも、サポート担当の名前も知りません。RAG は、モデルを学習し直さずにこの差を埋めます。資料を短いかたまり(チャンク)に分けて索引をつくり、質問が来たら合うチャンクを探して、質問と一緒にモデルへ渡します。モデルはそれを読んで答えます。
名前は、2020 年 5 月に Patrick Lewis らが発表した論文「Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks」から来ています。いまでは「資料とチャットする」機能のほとんどが同じ形です。ファイルを入れた Claude や ChatGPT のプロジェクト、ヘルプセンターのボット、社内検索のアシスタントなどです。
うまくいくかは 2 点で決まります。1 つはチャンクの切り方。Microsoft の Azure AI Search のガイドは、モデルや埋め込みに入力の上限があるので資料を分ける、その分け方で見つかるものが変わると説明しています。もう 1 つは文脈。Anthropic は、「前の四半期より売上が 3% 伸びた」というチャンクは、切り出した時点でどの会社のいつの話かを失う、と指摘しています。
小さなチームにとっての意味
- 自社の事実で答える。料金表を読むアシスタントは、推測ではなく今月の料金を答えます。
- 確かめられる。どの箇所を使ったかを示せるので、送る前に人が確認できます。
- エンジニアがいなくても始められる。Claude や ChatGPT のプロジェクトにファイルを入れれば、もう同じ形です。仕事は、どのファイルを入れてどう整えるかです。
- よくある失敗は地味。同じ規程の新旧 2 つの版。AI は両方を見つけて混ぜます。モデルでは直らず、フォルダーを片づけると直ります。
具体例
例として架空の会社を使います。コーナーデスク社は、オフィスに昇降デスクを貸す 6 人の会社です。問い合わせの多くは、配送・破損・返却についての同じ 20 種類ほどの質問です。社長が共有ドライブを丸ごとプロジェクトに入れて「返却が遅れたときの料金は?」と聞くと、アシスタントは 2024 年の料金表から「週 15 ポンド」と答えました。いまの料金は「返却 v3 最終版」という文書にある「1日 10 ポンド」です。
直すのはプロンプトではなく資料です。40 個のファイルを書き出し、テーマごとに担当を決め、古い版を消し、ファイルに日付と中身がわかる題をつけ、返却の文書は料金ごとに見出しを立てて分けました。正解つきのテスト質問を 10 問書いて試すと、2 回目は 10 問中 9 問が正解。残る 1 問で、配送中の破損について書いた文書がないことがわかり、だれかがその段落を書きました。
今週はじめること
- 仕事を 1 つに絞る。「知っていること全部」ではなく、たとえば配送の質問への回答。
- 使う資料を書き出す。それぞれに担当と最終更新日をつけ、重複と古い版を消す。
- 段落だけで意味が通るようにする。見出しでテーマを示し、製品名と日付を本文に書く。
- テスト質問を 10〜20 問書く。正解と、どの資料から答えるべきかも添える。
- 入れて、聞いて、直す。間違えた質問の裏にある資料を直してから、ファイルを増やす。
RAG ではないもの
- 学習ではない。モデルは変わらず、毎回資料を読みます。資料を消せば、答えもすぐ変わります。
- 資料全体を見渡す質問は苦手。Microsoft Research は、「全体を通した主なテーマは?」のような質問はふつうの RAG では答えにくいと述べています。1 つの箇所に答えがないからです。そのために作られたのが GraphRAG です。
- 指示とは別。RAG が渡すのは事実です。どうふるまうか(口調、断ること)は指示に書きます。コンテキストエンジニアリングを参照。
よくある質問
RAG は何の略?
Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)の略です。AI がまず資料から関係する部分を探し(retrieval)、それをもとに答えを書きます(generation)。2020 年の Patrick Lewis らの論文から広まった言葉です。
Claude や ChatGPT のプロジェクトにファイルを入れるのも RAG?
考え方は同じです。AI が渡されたファイルを調べ、そこから答えます。検索の索引を使うか、ファイル全体を読むかは製品とファイルの大きさしだいですが、資料の整え方は変わりません。
RAG を使えば AI は作り話をしなくなる?
正しい箇所が見つかれば減り、答えに出典を添えられるようになります。ただ、資料が古い、資料どうしが食い違う、そもそも答えが書かれていない、という場合は助けになりません。道具より、資料を整えるほうが効きます。
AI スキル
AI に、AI 検索で使えるように社内文書を整えさせる
「AI 検索のための文書の準備」スキルが、この手順を AI に任せられる形にしています。自社や担当する市場、数字を渡すと、AI が同じ手順で進めてまとめます。
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出典
- Lewis ほか、Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks(2020 年) — RAG という名前の元になった論文 (閲覧 2026-11-04)
- Anthropic:Contextual retrieval — チャンクが文脈を失う問題 (閲覧 2026-11-04)
- Microsoft Learn:Chunk documents(Azure AI Search) (閲覧 2026-11-04)
- Microsoft Research:GraphRAG(2024 年 2 月 13 日) — ふつうの RAG が苦手な質問 (閲覧 2026-11-04)