経営者の考え方

バフェットの「堀」、能力の輪、安全域

ウォーレン・バフェット本人および関係会社とは無関係で、推薦も受けていません。

ウォーレン・バフェットは、バークシャー・ハサウェイの株主への手紙で、事業を見るときの考え方を書いてきました。中でもよく知られているのが 3 つです。競合から高い利益を守る長続きする堀(モート)、評価できる範囲とその境界を知る能力の輪、そして価値と価格の間に余裕を取る安全域です。このページでは、それぞれがどの年の手紙に書かれているかを示し、自社の事業や大きな買い物の判断に当てはめる手順をまとめます。株式の売買をすすめるものではありません。

要点

  • 堀:高い資本利益率を守る、長続きする障壁。低コストや世界的なブランドなど(2007 年)。
  • 長続きすること:変化の激しい業界は外す。絶えず作り直す堀は、やがて堀でなくなる(2007 年)。
  • 能力の輪:大きさより、境界を知っていることが大事(1996 年)。
  • 安全域:価値が価格をわずかに上回るだけなら買わない(1992 年)。

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長続きする堀:高い利益を、競合から守るもの

2007 年の手紙でバフェットは、本当に優れた事業には、高い資本利益率を守る長続きする「堀」が必要だと書いています。高い利益を上げる事業の「城」には、競合が繰り返し攻めてくるからです。強固な障壁の例として挙げているのは、低コストで作れること(GEICO、コストコ)と、世界的に強いブランドを持つこと(コカ・コーラ、ジレット、アメリカン・エキスプレス)です。

同じ手紙は「長続き」という条件から、変化が速く絶えない業界を外すとしています。絶えず作り直さなければならない堀は、やがて堀ではなくなる、という一文もあります。

堀の中身は、ほかの年の手紙にも出てきます。1993 年の手紙はブランドの力、製品の特長、流通網の強さを、1995 年の手紙はほとんどの競合がまねできない低い運営コストを、1996 年の手紙は規模の経済を挙げています。

当てはめるときは、まず「いい製品」と「堀」を分けます。たとえば、半径 60 km 以内に競合の工場がないホテル向けクリーニング業者なら、新しい工場を建てるには大きな投資が要ります。これは競合が利益をまねするのを止める障壁なので、堀の候補になります。一方、「仕上がりがきれい」はまねされうるので、それだけでは堀と呼べません。

能力の輪:評価できる範囲と、その境界

1996 年の手紙は、投資家に必要なのは、選んだ事業を正しく評価する力だとしています。すべての会社に詳しい必要はなく、自分の能力の輪の中にある会社を評価できればよい。輪の大きさはあまり重要ではないが、その境界を知っていることが不可欠だ、という趣旨です。1992 年の手紙にも、バークシャーは自分たちが理解していると思える事業に絞る、それは比較的単純で安定した事業だ、という記述があります。

事業の判断に置き換えると、「この判断は、自分たちがよく知らないことに左右されていないか」を確かめることになります。別の街の同業者を買うなら、工場の運営は輪の中でも、その街の顧客との契約は輪の外かもしれません。

安全域:価値と価格の間に、余裕を取る

1992 年の手紙でバフェットは、買値に安全域を求めると書いています。株の価値を計算して、それが価格をわずかに上回るだけなら買わない。ベンジャミン・グレアムが強く説いたこの安全域の原則を、投資の成功の礎だと考えている、という内容です。1997 年の手紙でも、グレアムが知的な投資の礎とした「安全域」に触れています。

事業の判断では、見積もった価値(や計画の効果)と、払う価格(や計画のコスト)の差を出したうえで、いちばん大事な前提を悪いほうに動かして計算し直します。それで差が消えるなら、安全域は薄いということです。

自社の事業に当てはめる手順

  1. 事業の利益率と資本利益率を、手元の数字で書き出します。
  2. 堀の候補(低コスト、ブランド、流通、規模など)ごとに、根拠になる数字と、競合ならどう越えてくるかを書きます。
  3. それぞれの堀が 5〜10 年後も残るか、業界の変化の速さと、維持にかかる費用から判断します。
  4. 判断に関わる人がよく知っていることと、知らないことを分け、判断が輪の外に左右されていないかを確かめます。
  5. 価値と価格の差を出し、大事な前提を 2 つ悪くして計算し直します。
  6. 3 つの問いそれぞれの結論と、まず確かめるべきことを 1〜3 個書きます。

手紙にあること、ないこと

このページの内容は、上に挙げた年のバークシャー・ハサウェイの株主への手紙から取り、日本語にするときは私たちの言葉でまとめました。手紙は投資と、バークシャーが買う事業についての文章です。自社の事業の見直しや買収以外の大きな判断に当てはめるのは、私たちの応用です。このページも下のスキルも、株式の売買をすすめるものではありません。

よくある質問

バフェットの言う「堀(モート)」とは何ですか?

高い資本利益率を競合から守る、長続きする障壁のことです。2007 年の手紙は、低コストで作れることや、世界的に強いブランドを持つことを例に挙げ、絶えず作り直さなければならない堀は、やがて堀ではなくなると書いています。

能力の輪(サークル・オブ・コンピテンス)とは?

自分が正しく評価できる事業の範囲です。1996 年の手紙は、輪の大きさはあまり重要でなく、その境界を知っていることが不可欠だと書いています。

安全域(マージン・オブ・セーフティ)とは?

見積もった価値と買値の間の余裕です。1992 年の手紙は、価値が価格をわずかに上回るだけなら買わないとし、ベンジャミン・グレアムが強調したこの原則を投資の成功の礎と呼んでいます。

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下のスキルは、ここで紹介した原則を、あなたの計画・数字・判断に当てはめる手順にしたものです。出典のある原則に照らして見直すもので、本人になりきって話すものではありません。

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出典

  1. Berkshire Hathaway 2007 年の株主への手紙(英語、PDF) — 長続きする堀が高い資本利益率を守る。絶えず作り直す堀はやがて堀でなくなる (閲覧 2026-11-04)
  2. Berkshire Hathaway 1993 年の株主への手紙(英語) — ブランド、製品の特長、流通網が経済の城を守る堀になる (閲覧 2026-11-04)
  3. Berkshire Hathaway 1995 年の株主への手紙(英語) — ほとんどの競合がまねできない低い運営コスト。GEICO の堀 (閲覧 2026-11-04)
  4. Berkshire Hathaway 1996 年の株主への手紙(英語) — 能力の輪。大きさより境界を知ることが大事。規模の経済による堀 (閲覧 2026-11-04)
  5. Berkshire Hathaway 1992 年の株主への手紙(英語) — 理解できる事業に絞る。買値に安全域を求める (閲覧 2026-11-04)
  6. Berkshire Hathaway 1997 年の株主への手紙(英語) — グレアムが知的な投資の礎とした安全域 (閲覧 2026-11-04)
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