ビジネスの古典

『はじめの一歩を踏み出そう』:自分がいなくても回る会社をつくる

『はじめの一歩を踏み出そう』(原著 The E-Myth Revisited)は、マイケル・ガーバーが 1986 年の『The E-Myth』を 1995 年に改めた、小さな会社の経営者のための本です。会社の多くは起業家ではなく、職人、つまり仕事そのものが得意な人が始める。そして、仕事が分かれば、その仕事をする会社も回せると思い込む。ガーバーはそう論じます。その結果、経営者がそのまま会社になってしまう。答えは、会社の中で働くだけでなく、会社の上で働くこと。毎回同じ結果をほかの人が出せる仕組みを持つ、フランチャイズの試作品のように会社をつくることです。

要点

  • 致命的な思い込み:仕事が分かることと、会社を回せることは別。
  • 3 つの役割:職人は仕事をし、マネジャーは秩序をつくり、起業家は先を見る。
  • 会社の上で働く:仕事をこなすだけでなく、会社の動き方を設計する。
  • フランチャイズの試作品:ふつうの訓練を受けた人が同じ結果を出せる仕組み。

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どんなときに使うか

経営者が病気や休暇でいないと会社が止まるとき、経営者が顧客の仕事に追われて先のことを考える時間がないとき、最初の採用の前に使います。

繰り返しのあるサービスや職人の仕事に向いています。毎回まったく違う一点ものの仕事には、あまり合いません。手順書を 1 つずつ書くには業務手順書(SOP)を作るスキルが使えます。

押さえておく考え方

起業家の神話。配管工が配管の会社を、パン職人がパン屋を開きます。どちらも仕事が得意で、それで十分だと思っています。ガーバーはこれを致命的な思い込みと呼びます。

3 つの人格。経営者の中には、仕事をしたい職人、秩序と計画を求めるマネジャー、新しいものをつくりたい起業家がいます。多くの経営者は、ほとんどの時間を職人として過ごしています。

会社の成長段階。ガーバーは、経営者と会社が同じである幼年期、人を雇っても経営者が全部を支えている青年期、最初から広い視野でつくられた成熟期を描きます。

フランチャイズの試作品。ガーバーが手本にした、マクドナルドのレイ・クロックのような創業者と同じく、会社を自分とは別の仕組みとして見ます。仕組みが、顧客が当てにできる同じ結果を生みます。

事業開発のプログラム。本は、経営者自身の第一の目標(望む暮らし)、会社の戦略的な目的、人ではなく役割で描く組織図、そして経営、人、マーケティング、運営の仕組みを順にたどります。

小さな例で試す

説明のための架空の例です。トロントのキッチン改装の会社に 4 人がいます。経営者は週 62 時間働き、内訳は大工仕事 30、見積もり 12、資材の発注 8、帳簿 5、顧客からの電話 7 です。大工 2 人は毎朝指示を待ち、経営者が 1 週間病気で休んだときは、2 件の工事が止まりました。

役割で並べると、職人の時間が 42、マネジャーの時間が 20、起業家の時間は 0 です。組織図には 5 つの役割があり、そのうち 4 つを経営者が持っています。最初に書き出す仕組みは 3 つ。前の晩に送る翌日の作業計画、資材の発注リスト、金曜に写真つきで送る顧客への報告です。

会社の上で働き始める手順

  1. 自分の 1 週間を、職人、マネジャー、起業家の時間に分けます。
  2. 第一の目標を書く。会社に支えてほしい暮らしです。
  3. 戦略的な目的を書く。だれに、何を約束し、売上はいくらで、いつ自分なしで回るか。
  4. 役割の組織図を描き、自分が持っている役割に名前を書き込みます。
  5. 仕組みを 3 つ選ぶ。時間をいちばん食うものか、自分がいないと壊れるものです。
  6. 毎回の結果を決める。顧客が気づく形で書きます。
  7. 1 つずつ引き継ぐ。研修と、自分がやめる日を決めます。

自分の 1 週間でこの手順を回すなら、会社の仕組みの試作品のスキルが使えます。見積もった時間には印をつけます。

よくある失敗

  • 役割も結果も決めずに「手伝い」を雇う。経営者が仕組みのままです。
  • 全部を一度に書き出す。いちばん時間が空く 3 つから始めます。
  • まれな才能に頼る仕組み。
  • 経営者自身の目標を忘れる。

出典について

マイケル・E・ガーバーは 1977 年に小さな会社向けのコーチングの会社 EMyth を始めました。一緒に働いた小さな会社の経営者の多くが職人で、会社の回し方を知らないことに気づいたのがきっかけです。1986 年に『The E-Myth』、1995 年に『The E-Myth Revisited』を出し、そのあと業種別の E-Myth の本を数多く書いています。邦訳は原田喜浩 訳『はじめの一歩を踏み出そう 成功する人たちの起業術』で、世界文化社から 2003 年に出ています。

このページは、私たちが自分の言葉でまとめた独立した要約です。ガーバー本人、EMyth、出版社とは関係がなく、承認も受けていません。「E-Myth」はその権利者の商標です。書名は本を示すためだけに使っています。ほかの解説はビジネス書と戦略書の解説一覧にあります。

よくある質問

E-Myth とは?

マイケル・ガーバーが「起業家の神話」と呼ぶもので、小さな会社の多くは起業家が始める、という思い込みです。彼は、多くは職人、つまり仕事そのものが得意な人が始め、仕事が分かれば会社も回せると思い込む、と論じます。

会社の上で働くとは?

自分で顧客の仕事をこなすだけでなく、会社がどう動くか、仕組み、役割、水準を設計することに時間を使うことです。ガーバーは、会社の中で働くことと対比させています。

フランチャイズの試作品とは?

会社を、フランチャイズの手本のようにつくるというガーバーの助言です。書き出された仕組みがあれば、ふつうの訓練を受けた人が毎回同じ結果を出せます。実際にフランチャイズにするかどうかは関係ありません。

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出典

  1. EMyth:About — ガーバーは 1977 年に会社を創業。会社は起業家が始めるという神話。職人と致命的な思い込み。レイ・クロックとトム・ワトソン (閲覧 2026-11-04)
  2. Wikipedia:Michael E. Gerber — The E-Myth(1986 年)、The E-Myth Revisited(1995 年)、その後の E-Myth の本 (閲覧 2026-11-04)
  3. CiNii Books:『はじめの一歩を踏み出そう』 — 原田喜浩 訳、世界文化社、2003 年 6 月。改訂版 2006 年 (閲覧 2026-11-04)
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