ビジネスの古典
ファイブフォース分析のやり方:ポーターの 5 つの力
ファイブフォース分析は、業界の利益がなぜその水準なのかを、価格とコストにかかる 5 つの圧力で説明する方法です。5 つとは、既存の競合同士の競争、新規参入の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力、代替品の脅威。業界の範囲を決め、力ごとに根拠をつけて強さを評価し、利益を抑えている 1〜2 つの力を見つけて、どこで戦うか、何を変えるかを決めます。
要点
- 5 つの力:競合同士の競争、新規参入、売り手の交渉力、買い手の交渉力、代替品。
- 最初にやること:業界の範囲を、商品と地域の 2 つの軸で決める。
- 力ではないもの:成長率、技術、政府、補完財。どれも 5 つの力を通して効く。
- 結論:利益を決めている力と、それを踏まえてどこで戦うか。
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どんなときに使うか、使わないか
新しい市場に入る前、どの顧客層を狙うか決めるとき、業界の利益率が思ったより低くて理由を知りたいときに使います。大口の顧客が毎年価格で入札をかけ始めた、仕入れ先が合併した、安い代わりの手段が出てきた、といった変化を読むのにも向いています。
ファイブフォースは業界を見る道具です。分かるのは業界の利益がどう分けられているかで、その中で自社がどう勝つかではありません。そこはポーターの 3 つの基本戦略と、自社のバリューチェーンで考えます。自分がどの業界にいるのかがまだ言えない段階では、先にそれを決めてください。
5 つの力を平たく言うと
| 力 | 利益に何をするか | 強くなるのは |
|---|---|---|
| 競合同士の競争 | 値下げ、新商品、広告で利益を削り合う | 競合が多い・同じくらいの規模、成長が遅い、固定費や撤退の壁が高い |
| 新規参入の脅威 | 高い値段が新しい会社を呼ぶので、値上げできない | 少ない資金や規模で始められる、顧客が乗り換えやすい、既存の会社が反撃しない |
| 売り手の交渉力 | 仕入れ値の値上げや条件の悪化で、価値を持っていく | 売り手が業界より集中している、乗り換えにくい、この業界に頼っていない |
| 買い手の交渉力 | 値下げや、同じ値段でより多くを求める | 買い手が少ない・大きい、商品に差がない、乗り換えが安い、自分で作れる |
| 代替品の脅威 | 業界の外から、価格の上限を決める | 別の手段のほうが価格に比べて性能がよい、買わずに済ませる・自前でやれる |
2008 年の論文で、使い方が変わる点が 2 つあります。1 つは、新しい会社が本当に入ってこなくても、入ってこられる状態であるだけで、既存の会社は値上げに慎重になること。もう 1 つは、成長率、技術、政府の政策、補完財は力に数えないことです。特許は参入の壁を高くし、つぶれかけた会社を生き残らせる制度は競争を激しくします。6 つ目の枠を足すのではなく、どの力を動かすかをたどります。
ファイブフォース分析のやり方
- 業界の範囲を決める。どの商品が入り、どれが隣の業界か。競争が起きている地域はどこまでか。買い手や売り手、参入の壁が大きく違う商品や地域は、別の業界として分けます。
- 登場する相手を挙げる。競合、買い手、売り手、代替品、入ってきそうな会社を書き出します。交渉力が違う買い手や売り手は、グループに分けます。
- 力ごとに、要因と根拠から強さを決める。当てはまる要因、根拠になる事実、利益への圧力(低・中・高)を書きます。足りない事実に頼っている評価には印をつけます。
- ほかの要因は力を通して見る。成長率、技術、規制、補完財が、どの力をどちら向きに動かすかを書きます。
- 利益を決めている力を見つける。いちばん利益を抑えている 1〜2 つの力を選び、数年分の実際の利益率と照らし合わせます。利益の高い会社がその力に強い立ち位置にいなければ、評価を見直します。
- 変化を書く。力ごとに最近の変化とこれからの変化を書き、構造の変化と、一時的な景気の波を分けます。
- どこで戦い、何を変えるか決める。力が弱いところに立つ、変化を先取りする、業界の構造そのものを変える。打ち手ごとに、どの力に効くかを書きます。
ミニ事例
架空の会社による例です。必要な事実はすべてここに書いています。かわクリーンは、人口 40 万人の市で家事代行をしている会社で、スタッフは 30 人です。業界の範囲は「この市の、個人宅の定期清掃」としました。オフィス清掃は入札で年間契約を結ぶ買い手が相手で、構造が違うので外します。
| 力 | 根拠 | 圧力 |
|---|---|---|
| 競合同士の競争 | 小さな会社が約 25 社、全国チェーンが 2 社。時給の安さで競う会社が多い | 高 |
| 新規参入 | 電話と道具と数人のスタッフで始められる。マッチングアプリから個人の新規参入が毎月ある | 高 |
| 売り手 | スタッフが採れず、去年は時給が上がった。道具は安い | 高(人手) |
| 買い手 | 数千の家庭で、1 軒ずつは小さい。信頼できる人が決まると比べ直さない | 低〜中 |
| 代替品 | 自分で掃除する、ロボット掃除機 | 中 |
利益を決めているのは、新規参入と人手です。だれでも始められるので値段が上がらず、採りにくいスタッフの時給が売上の多くを持っていきます。共働きの家庭が増えて需要が伸びても、参入も増えるので、この構図は変わりません。
かわクリーンが決めたこと:1 回だけの依頼の取り合いからは降ります。買い手が値段を比べ、新しく入った人が勝ちやすいところだからです。同じスタッフが毎週同じ家に行く定期契約に絞ります。信頼が乗り換えの手間になり、買い手の力が弱いまま保てます。スタッフには固定のシフトと長めの契約を出し、人手が足りない市場で選ばれる側に回ります。どの打ち手も、どの力への答えかが言えます。同じ手順を自社の事実で回すなら、ファイブフォース分析のスキルが使えます。
よくある失敗
- 業界の範囲があいまい。「清掃業」では、家庭、オフィス、病院が混ざります。買い手も参入の壁も違うので、だれも戦っていない市場の評価になります。
- 事実を並べて終わる。5 つの欄に箇条書きを埋めても分析にはなりません。力ごとに強さと理由が要ります。
- 5 つを同じ重さで扱う。利益の水準は、たいてい 1〜2 つの力で説明できます。そこを深く掘ります。
- 6 つ目の力を足す。「政府」や「技術」を枠にすると、どう効いているかが見えなくなります。
- 「魅力的」「魅力がない」で止める。目的は点数ではなく、どこでどう戦うかを決めることです。
- 一時点で見る。仕入れ値が一度上がったのと、仕入れ先が競合を買収したのとでは、意味が違います。
出典について
ファイブフォースは、ハーバード・ビジネス・スクールの教授マイケル・E・ポーターが、1979 年に Harvard Business Review の論文で示し、1980 年の著書『競争の戦略』(原著 Competitive Strategy、Free Press)で体系にしたものです。2008 年の HBR 論文「The Five Competitive Forces That Shape Strategy」で、業界の範囲の決め方や、力に数えない要因の扱いが補われました。このページは、私たちが自分の言葉でまとめた独立した解説で、著者や出版社が書いたり確認したりしたものではありません。ほかのフレームワークは戦略の本とフレームワークの一覧から。
よくある質問
ファイブフォースの 5 つの力とは?
既存の競合同士の競争、新規参入の脅威、売り手(供給業者)の交渉力、買い手(顧客)の交渉力、代替品の脅威の 5 つです。業界が生んだ価値のうち、業界の会社の手元にどれだけ残るかを、この 5 つが決めます。
政府や補完財は 6 つ目の力?
ポーターの 2008 年の論文では、6 つ目の力として扱いません。政府の政策も補完財も、それ自体は利益にとって良くも悪くもないからです。どの力をどちら向きに動かすかをたどって評価します。
成長している業界は魅力的?
そうとは限りません。成長は競争をやわらげますが、新規参入を呼び、供給業者を強くすることもあります。買い手が強い、代替品が安いといった業界では、成長しても利益は残りません。
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出典
- Michael E. Porter「The Five Competitive Forces That Shape Strategy」Harvard Business Review, 2008 年 1 月号 — 2008 年の再整理(最初の HBR 論文は 1979 年)。業界の定義、力ではない要因、分析の手順、戦略への示唆 (閲覧 2026-11-04)
- The Five Competitive Forces That Shape Strategy(HBR 抜き刷り R0801E)- Harvard Business Review Store (閲覧 2026-11-04)
- ハーバード・ビジネス・スクール Institute for Strategy and Competitiveness:The Five Forces — 5 つの力と、それぞれを強める要因 (閲覧 2026-11-04)
- ハーバード・ビジネス・スクール:Competitive Strategy(Free Press, 1980) — 書籍と刊行年 (閲覧 2026-11-04)