戦略の古典
バリューチェーン分析のやり方:ポーターのモデル
バリューチェーン分析は、事業を、仕入れから顧客へのサービスまでの活動に分け、活動ごとに、いくらかかっているか、何がそのコストを動かすか、顧客はそこに何の価値を感じているかを見る方法です。活動を書き出し、コストがどこにあり価値がどこで生まれているかをつかみ、活動どうしが 1 つの戦略にかみ合っているかを確かめて、いちばん効く 2〜3 点の変更を決めます。
要点
- 主活動:購買物流、製造(オペレーション)、出荷物流、販売・マーケティング、サービス。
- 支援活動:調達、技術開発、人事・労務管理、全般管理。
- 活動ごとに見るもの:コストの割合、コストを動かす要因、顧客にとっての価値。
- 大事な点:強みは 1 つの活動ではなく、かみ合った活動の組み合わせから生まれる。
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どんなときに使うか、使わないか
利益が薄いのに、どの活動が食っているのかだれも言えないとき。外注、自動化、投資の先を決めるとき。戦略を選んだあと、日々の仕事がそれを支えているか確かめるときに使います。競合がコストや、顧客に好かれている機能で勝っているときにも、活動ごとに比べると差の出どころが見えます。
見るのは 1 つの事業の中です。業界そのものがもうかるかどうかはファイブフォース分析で見ます。また、コストで戦うのか違いで戦うのかが決まっているほうが、判断がぶれません(ポーターの 3 つの基本戦略)。事業が複数ある会社は、事業ごとに 1 つずつ描きます。
基本の考え方
ポーターの考えでは、コストはすべて、会社の強みや違いもほとんどが、どの活動をどう回しているかにさかのぼれます。だから分析の単位は、部署や商品ではなく活動です。
| 区分 | 活動 | 小さな会社での例 |
|---|---|---|
| 主活動 | 購買物流 | 材料の受け入れと保管 |
| 主活動 | 製造(オペレーション) | 商品をつくる、サービスを提供する |
| 主活動 | 出荷物流 | 梱包、発送、配送の段取り |
| 主活動 | 販売・マーケティング | 広告、ウェブサイト、営業、価格 |
| 主活動 | サービス | 設置、修理、使い方の講習、購入後のサポート |
| 支援活動 | 調達 | 仕入れ先を選び、材料を買う |
| 支援活動 | 技術開発 | 商品の設計、工程の改善、ソフトウェア |
| 支援活動 | 人事・労務管理 | 採用、育成、給与 |
| 支援活動 | 全般管理 | 経営、経理、計画、法務 |
この 9 つは確認用のリストで、答えではありません。役に立つ図には、その会社自身の活動の名前が並びます。コストのかかり方や顧客にとっての重さが違うなら、1 つの区分を分けて書きます。
活動は互いに影響します。前の工程でしっかり確かめれば次の工程のやり直しが減り、納期の約束は製造の段取りがそれに合わせてあって初めて守れます。ポーターは 1996 年の論文で、フィットを 3 段階で説明しました。1 つ目は、各活動が戦略と矛盾しないこと。2 つ目は、活動どうしが互いを強めること。3 つ目は、活動の間で手間をそろえ、むだを省くこと。かみ合った活動の組み合わせの上に立つ位置は、1 つの活動に頼る位置よりずっとまねされにくい。競合は全部を同時にそろえなければならないからです。
さらに、1 社のバリューチェーンは、仕入れ先や販売チャネルのチェーンを含む、より大きな価値システムの一部です。仕入れ先にやってもらうこと、販売店に任せることといった、境目での変更が効く場合もあります。
バリューチェーン分析のやり方
- 対象と戦略を決める。描く事業と、その事業の戦略(低コストか、どんな違いか)を書きます。以降の判断は、すべてこの戦略に照らして行います。
- 活動を書き出す。9 つの区分を確認用に使い、その下に自社の活動を書きます。金額の大きい仕入れ品は 1 行に分けます。
- コストの割合を入れる。費用と人を活動に割り振り、合計がおよそ 100% になるようにします。見積もりの数字には見積もりと書きます。
- コストを動かす要因を見つける。割合の大きい活動について、量、稼働率、立地、仕入れ値、ほかの活動での選び方など、コストを上げ下げするものを書きます。
- 価値を生む要因を見つける。活動ごとに、顧客が気づき、払っている点、または離れる理由になっている点を、レビューや営業のメモ、解約の理由から書きます。
- フィットを確かめる。互いを強めている活動と、戦略と逆を向いている活動に印をつけます。
- 変える 2〜3 点を選ぶ。かかっているコストや価値の大きさと、戦略へのかみ合い方で順位をつけます。活動、変えること、見込める効果、手放すものを書きます。
ミニ事例
架空の会社による例です。必要な事実はすべてここに書いています。波陶房は、人口 3 万人の町で手づくりの器をつくる会社で、スタッフは 11 人です。戦略は、メニューをよく変える飲食店向けの個性のある器と、家で料理をする人へのネット販売。年間のコストは、土と釉薬 12%、成形と施釉 31%、窯の焼成(ガス)14%、梱包と発送 15%、料理人と組む新しい器のデザイン 7%、ネットショップと広告 9%、飲食店への営業 5%、管理 7% です。
| 活動 | 割合 | コストを動かす要因 | 顧客にとっての価値 |
|---|---|---|---|
| 成形と施釉(製造) | 31% | 1 点あたりの時間 | 料理人が買う理由になっている見た目 |
| 梱包と発送(出荷物流) | 15% | 破損、ネット注文 1 件ごとの箱 | 無事に届くこと。ネット注文の 6% が配送中に割れる |
| 窯の焼成(製造) | 14% | 窯が半分空のまま焼いている | 直接はない |
| 料理人と組むデザイン(技術開発) | 7% | デザイナーの時間 | メニューに合うので、飲食店がまた注文する |
コストがあるところ:いちばん大きいのは成形と施釉ですが、ここは飲食店が買う理由そのものなので、削ると戦略が崩れます。むだは別のところにあります。飲食店の注文がばらばらに入るので窯が半分空のまま焼かれ、破損すれば 1 つの器に 2 回分のコストがかかります。
フィット:料理人と組むデザインと手づくりの製造は互いを強めていて、飲食店はメニューが変わるたびにまた注文します。逆を向いているのはネット販売です。1 回きりの注文で、破損がいちばん多く、急に窯の枠を取ります。
変える 3 点:(1) 窯を週 2 回の決まった日に焚き、飲食店の注文をその日に組み込む。窯は埋まるが、急ぎの注文への融通は減る。(2) 梱包を見直し、ネット注文は週 1 回まとめて発送する。破損は減るが、届くのは遅くなる。(3) 飲食店に季節ごとのデザイン契約を出し、デザインの時間を先に払ってもらう。小さな店の一部は契約しないかもしれない。自社の数字で同じ表をつくるなら、バリューチェーン分析のスキルが使えます。
よくある失敗
- 教科書の図に一般的な名前を入れて終わる。自社の活動と数字がなければ、新しいことは何も分かりません。
- 活動ではなく部署で分ける。1 つのチームが 3 つの違う仕事をしていると、3 つのコストが見えなくなります。
- いちばん大きいコストを反射的に削る。いちばん大きい活動が、顧客にとっての価値の出どころであることは多いです。
- 活動を 1 つずつ見る。節約も強みも、多くは活動と活動のつなぎ目にあります。
- 改善案を 20 個並べる。戦略に合う少数を選び、それぞれで何を手放すかを書きます。
出典について
バリューチェーンは、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・E・ポーターが、1985 年の著書『競争優位の戦略』(原著 Competitive Advantage: Creating and Sustaining Superior Performance、Free Press)で、主活動と支援活動の形で示したものです。1996 年の HBR 論文「What Is Strategy?」で、強みは活動どうしのかみ合い方にあるという考えが加わりました。このページは私たちが自分の言葉でまとめた独立した解説で、著者や出版社が書いたり確認したりしたものではありません。ほかのフレームワークは戦略の本とフレームワークの一覧から。
よくある質問
バリューチェーンの主活動と支援活動とは?
主活動は、購買物流、製造(オペレーション)、出荷物流、販売・マーケティング、サービスの 5 つ。支援活動は、調達、技術開発、人事・労務管理、全般管理(インフラ)の 4 つです。
バリューチェーンとサプライチェーンの違いは?
バリューチェーンは 1 社の中の活動を並べ、それぞれがどれだけコストを使い、どれだけ価値を足すかを見ます。仕入れ先や販売チャネルの活動まで含めた大きな流れを、ポーターは価値システムと呼んでいます。
分析の結論として何を出せばいい?
活動ごとのコストの割合、コストを動かす要因、顧客にとっての価値をまとめた表と、活動どうしが戦略に合っているかの確認、そして変える 2〜3 点です。変えることで何を手放すかも書きます。
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出典
- ケンブリッジ大学 Institute for Manufacturing:Porter's Value Chain — 5 つの主活動と 4 つの支援活動。Competitive Advantage(1985)を出典に挙げる (閲覧 2026-11-04)
- ハーバード・ビジネス・スクール Institute for Strategy and Competitiveness:The Value Chain — 活動を価値を足す段階として見る、価値システム (閲覧 2026-11-04)
- Michael E. Porter「What Is Strategy?」Harvard Business Review, 1996 年 11-12 月号 — コストと差別化は活動から生まれる、3 段階のフィット、活動のシステムはまねされにくい (閲覧 2026-11-04)
- ハーバード・ビジネス・スクール:Competitive Advantage(Free Press, 1985) (閲覧 2026-11-04)