ビジネスの古典
『ポジショニング戦略』:買い手の頭の中に場所をとる
『ポジショニング戦略』(原著 Positioning: The Battle for Your Mind)は、アル・ライズとジャック・トラウトが 1981 年に出した、ブランドがどう覚えられるかの本です。買い手は多すぎる広告にさらされていて、カテゴリーごとに少数のブランドだけを、順位のついたはしごのように頭の中に持っています。二人のいうポジショニングは、商品ではなく見込み客の頭の中に対してすることです。いちばん入りやすいのは、そのカテゴリーで一番手になること。なれないなら首位との関係で自分を位置づけるか、一番手になれる新しいカテゴリーをつくり、言葉を 1 つ持ちます。
要点
- 頭の中は満員:買い手は、すでにある枠に合うものだけを残す。
- はしご:カテゴリーごとに少数のブランド。一段目がいちばん守りやすい。
- 一番手になるか、違いを出す:首位を守る、首位に対して位置づける、新しいカテゴリーをつくる。
- 言葉を 1 つ持つ:何でも表すブランドは、何も表さない。
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どんなときに使うか
ブランドがたくさんのことを言っていて、買い手が何も覚えていないとき。挑戦者が強い首位と戦わなければならないとき。ブランド名を新しい商品群に広げる前や、新商品に名前をつける前に使います。
顧客の代わりの手段から始める手順は『Obviously Awesome』の解説に、最初に攻める市場の選び方はキャズム理論の解説にあります。
押さえておく考え方
情報過多の社会。人は多すぎるメッセージから身を守るため、すでに思っていることに合うものだけを残します。枠の見つからないメッセージは捨てられます。
はしご。カテゴリーごとに、買い手は短いブランドのはしごを持っています。はしごを上るのは難しく、首位の段はたいてい埋まっています。
一番手であること。カテゴリーで最初のブランドは、枠そのものをつくったので、首位を保ちやすい。
首位に対して位置づける。挑戦者は首位との関係で自分を語ります。首位の強みを、裏返せば弱みになる形で突くことが多いです。
新しいカテゴリーをつくる。はしごが埋まっていれば、一番手になれる、より狭いか違うカテゴリーを探します。
名前とライン拡張。名前は位置を支えるべきです。強い名前を関係のない商品にまで付けると、何を表すかがぼやけます。
小さな例で試す
ブランド名も含めて架空の例です。チリの Cuentafácil は、小さな商店向けの会計ソフトです。店主 20 人へのインタビューで、最初に名前が出たのは Balanzo が 12 人、Librox が 5 人、Cuentafácil が 2 人。口コミで Balanzo は「会計士向け」と言われています。Cuentafácil の顧客の 80% には会計士がおらず、週 10 分で帳簿をつけています。
Cuentafácil ははしごの 3 段目で、自分の言葉を持っていません。首位の強み「会計士向け」の裏側が空いています。位置は「会計士なしで、店主が自分で帳簿をつける会計ソフト」。持つ言葉は「会計士なしで」。「総合ビジネスプラットフォーム」と言うのはやめます。
自社の位置の見つけ方
- 買い手の言葉でカテゴリーを決める。
- はしごを描く。買い手が思い出すブランドを順に並べ、それぞれが持つ言葉を書きます。
- 自社の段と、すでに結びついている言葉を見つける。
- 戦い方を選ぶ。首位を守る、首位に対して位置づける、新しいカテゴリーをつくる。
- 言葉を 1 つ選ぶ。本当で、首位と違い、買い手にとって大事な言葉です。
- 名前と商品群を確かめる。位置をぼやかすものがないかを見ます。
- 位置を 1 文で書き、言うのをやめることを並べる。
インタビューや口コミでこの手順を回すなら、頭の中の位置チェックのスキルが使えます。買い手の証拠なしに描いたはしごには印をつけます。
よくある失敗
- 言葉をいくつも持とうとする。何でも表すブランドは、何も持てません。
- 首位の強みに正面から挑む。強みの裏にある弱みをねらいます。
- 本当でない言葉を選ぶ。商品と食い違う主張は、頭が受けつけません。
- 自社の目線ではしごを描く。インタビューや口コミの、買い手の言葉を使います。
出典について
ジャック・トラウトは 1969 年に Industrial Marketing 誌でポジショニングについて書き、広告業界出身の二人は 1972 年に Advertising Age 誌で 3 回の連載を出しました。本は 1981 年に続きます。商品を位置づける考え方そのものはそれ以前からあった、とマーケティングの研究者は指摘しており、ライズとトラウトはそれを広く知らしめたと言えます。邦訳は川上純子 訳『ポジショニング戦略 世界中で30年間読み継がれる、マーケターのバイブル』(新版)で、海と月社から 2008 年に出ています。
このページは、私たちが自分の言葉でまとめた独立した要約です。著者、その遺族、出版社とは関係がなく、承認も受けていません。書名は本を示すためだけに使っています。ほかの解説はビジネス書と戦略書の解説一覧にあります。
よくある質問
ライズとトラウトのいうポジショニングとは?
商品に何かをすることではなく、見込み客の頭の中に何かをすることです。買い手がそのカテゴリーで覚えている少数のブランドの中で、自社が占められる場所を見つけます。
ブランドのはしごとは?
買い手がカテゴリーごとに頭の中に持っている、順位のついた短いブランドの一覧です。一段目がいちばん守りやすく、下の段のブランドは、首位との関係で位置を決めるか、自分が一番手になれる新しいカテゴリーをつくります。
エイプリル・ダンフォードのポジショニングとの違いは?
ライズとトラウトは、買い手の頭の中でブランドが占める場所と、言葉を 1 つ持つことに注目します。ダンフォードの『Obviously Awesome』は、顧客の代わりの手段から始める、企業向けやテック商品のための手順を示します。
AI スキル
AI に、自社のブランドが持てる言葉を 1 つ見つけさせる
「Mind position check (英語)」スキルが、この手順を AI に任せられる形にしています。自社や担当する市場、数字を渡すと、AI が同じ手順で進めてまとめます。
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出典
- Wikipedia:Positioning (marketing) — トラウトの 1969 年の Industrial Marketing の記事、1972 年の Advertising Age の連載、1981 年の本。考案者をめぐる研究者の指摘 (閲覧 2026-11-04)
- Wikipedia:Al Ries — ジャック・トラウトとともにポジショニングを広めた (閲覧 2026-11-04)
- CiNii Books:『ポジショニング戦略』 — 川上純子 訳、海と月社、2008 年 4 月 新版 (閲覧 2026-11-04)